アラベスク

先月訪れた高松の本屋「なタ書」のオーナーである藤井さんから、「トルコ 旅と暮らしと音楽と」という本が突然オフィスに届いた。ナタ書へ訪れた際に私がトルコの詩集はありませんか、と尋ねた経緯があり、詩集の代わりにこのエッセイをお薦めしてくれたのだ。藤井さんの手紙によると、この本は絶版で、かつてイスタンブールを旅する人のバイブルとなっていたものらしい。初対面の私のリクエストを覚えて頂いていたのも嬉しいし、突然旅に関する本が届くというのもAmazonに慣れた生活の中ではちょっと非現実的で面白い。ちょうど9月にイギリスへ戻ったら、一週間ほどイスタンブールを訪れてみたいと思っていたので、一足先に旅する気分で読み始めてみた。

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この本の中で「日本のサラリーマンはかなりアラベスクだね」と日本通のトルコ人に評されるシーンがある。“サラリーマン”と“アラベスク”という響きのコントラストが印象的で面白い表現だなと思った。アラベスクとは“アラブ風の”という意味で、アラベスクは厳しい現実から目を逸らし夢や幻想に逃げる生き方や物の考え方らしい。会社のために自分の幸せを投げ捨て、夜な夜な酒場で人生の憂さを晴らし、浮いた恋をしては初恋の人に想いを重ね幻想を抱く日本のサラリーマンはアラベスク。20年ほど前の本だから今は多少違う状況ではあるけれど、辛い現実を我慢する代わりに、ファンタジックな世界を築くのは、サラリーマンに限らず日本の特徴的な文化であると思う。

photo2SIRI SIRI の中にも「ARABESQUE」という主に籐を素材とするシリーズがある。この名を初めてつけた時には、アラベスク=唐草模様で、日本の唐草模様も偶像崇拝を禁止とするイスラム教文化をルーツとし、その考えから派生した想像上の模様、程度の知識しかなく、特別な人生観まで意味しているとは思ってもみなかった。ただ、私のデザインの特徴は実生活から少し離れた夢想的な部分があると自認していて、まさにそれはアラベスクだなと思った。ちなみに、リアリティのある実生活に密着するようなデザインは本当に苦手で、時々自分の能力の限界に失望している。まあ、その万能感を失った後に、それぞれの表現者の特徴が洗練されていくわけだけれども。

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写真:トルコのチャイも好き。オフィスの近くに見つけたトルコ料理屋さんにて。

ただ私の中でアラベスクではないのは、その夢想を何とか現実に融合できないかと考えているところである。感性を仕事にできるか、それがSIRI SIRI を始めた当初からの私のチャレンジで目標。そんな世界を実現できたら、一人ひとりそれぞれの物語を持つ事ができ、人生を謳歌できるのではないかと思っている。

 

 

 

SIRI SIRI designer 岡本

素材への旅/第三回 木 (江戸指物) について

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